中國古代の財政と國家

渡辺 信一郎

文学

经济史 渡辺信一郎

2010-9

汲古書院

目录
【内容目次】 序 説 「百姓不樂」/歐陽脩の「經濟表」/中国古代財政史研究の前提/中国古代財政研究の対象と課題 (一)收入論――「量入制出」(二)経費論――社会的共同業務(三)財政的物流と帝国編成 第一部 漢代の財政と帝国 第一章 漢代の財政運営と国家的物流 均輸・平準研究をめぐって――山田・影山論争から/漢代の中央財政と財政的物流――中央と地方 漢代の財政的物流――委輸と調均/おわりに――再び均輸・平準へ 第二章 漢代更卒制度の再検討――服虔=濱口説批判 従来の更卒制度理解と基本史料/踐更・居更・過更の内容/卒更制度について/更徭から更賦へ 補 論 漢代の徭役制度/更徭と踐更 第三章 漢魯陽正衛弾碑小考――正衛・更賤をめぐって  魯陽正衛弾碑について/正衛と更賤 第四章 漢代国家の社会的労働編成 徭役労働とその編成(一)内徭と外徭(二)内徭――郡内徭役(三)郡外徭役――中央的需要と広領域需 要/刑徒労働とその編成(一)中央的需要とその編成(二)地方的需要および広領域需要とその編成 官奴婢労働とその編成/おわりに――漢代における社会的労働編成の特質 第五章 漢代の財政と帝国編成 両漢期の帝国編成(一)中心‐周辺構造――三輔と内郡と辺郡(二)部都尉と属国制度 王莽期・新の帝国編成/帝国周縁地域における帝国編成(一)南越国と漢の帝国編成――内臣と外臣 (二)衛氏朝鮮と楽浪郡――貢納と帝国編成 第二部 魏晋南北朝期の財政と国家 第六章 占田・課田の系譜――晋南朝の税制と国家的土地所有 戸調と田税――「晋故事」と『隋書』食貨志(一)「晋故事」をめぐって(二)『隋書』食貨志をめぐって 課田と占田――『晋書』食貨志「戸調之式」(一)課田―戸調制について(二)占田制について 第七章 戸調制の成立――賦斂から戸調へ 西晋期の戸調制度/漢代の賦斂(一)漢代地方社会における賦斂の意味(二)中央政府による制度外の臨 時経費調達/曹魏戸調制度――賦斂から戸調制へ 第八章 南朝の財政と財務運営――劉宋南齊期を中心に 劉宋南齊期における財政の構造(一)收入構造構(二)経費構造/財務運営――地方財務と財政的物流 (一)臺傳の設置と地方存留財物の中央化(二)地方官府・軍府の資費と財政的物流 第九章 北魏の財政構造――孝文帝・宣武帝期の経費構造を中心に 北魏財政の收入構造/北魏財政の経費分配構造/財務運営――地方財務と財政的物流(一)地方財政の 特徴――蓄積型財政と中央管理(二)転運倉庫の設置と財政的物流 第十章 三五發卒攷實――六朝期の兵役・力役徴発方式と北魏の三長制 「三五發卒」の意味について/北魏末東魏の三長制と三五發卒/北魏三長制と徭役編成 第三部 隋唐期の財政と帝国 第十一章 唐代前期における農民の軍役負担――歳役の成立によせて 唐「開元二十五年令・賦役令」中の軍役関係条文/防人制とその崩壊過程をめぐって 防人制の源流を尋ねて(一)西魏北周の軍事編成と軍役負担(二)隋の正役と兵役――歳役の成立 おわりに――北魏軍制との関連によせて 第十二章 唐代前期賦役制度の再検討――雑徭を中心に 唐前期律令制下の支配と収取(一)律令制支配の特質(二)律令制収取――唐代百姓の負担義務 律令制下の軍役と徭役(一)律令制下の軍役(二)律令制下の徭役 正役と雑徭/色役と差科(一)色役について(二)差科ならびに色役賦課の基準 第十三章 唐代前期律令制下の財政的物流と帝国編成 政治的中心‐周辺構造の編成(一)行政的中心‐周辺構造(二)軍事的中心‐周辺構造 政治的中心‐周辺構造と財政的物流編成の構造的特質 (一)内部領域諸州と周辺軍事諸州との大規模広域編成 (二)中核領域と周辺領域における財政的物流編成――供御財政と供軍財政 (三)「儀鳳三年(六七八)度支奏抄・四年金部旨符」その他に見る財政的物流 (四)都督府を中継・貯備拠点とする収取と分配 開元二十五年の財政転換――全国的物流編成の構造転換と帝国の解体 (一)開元二十一年・二十二年の裴耀卿の漕運改革(二)開元二十五年の行財政転換 第十四章 唐代後半期の中央財政――戸部曹財政を中心に 開元・天宝期の財政とその特徴/唐代中期財政から後期財政への変化 唐代後半期の中央財政――戸部曹財政を中心に (一)開元・天宝年間の財務運営制度(二)戸部曹財政の成立(三)度支財政と戸部曹財政 第十五章 唐代後半期の地方財政――州財政と京兆府財政を中心に 唐代後期の州財政(一)唐代後期地方財政の規模(二)州財政の收入と経費(三)州財政の均衡調整 首都京兆府の財政/唐宋変革期における地方財政の中央集権化 参考文献・あとがき・索引
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内容简介
【序説】より 「百姓不樂」は、中国古代末期の農民が皇帝を目の前において口にした、中国古代社会の総括的表現である。 それは、司馬光が指摘するように、皇帝・官僚と百姓が構成する政治社会の、文字どおり千歳にわたる歴史の中で醸成されたものである。その直接的な内容は、正規租税、臨時の徭役・雑税(賦斂)、および和糴など その他の收取とその輸送にかかわる問題であった。北魏における和糴の出現が示すように(本書第九章)、その背景には、対内・対外戦争を遂行するための軍事経費の捻出と広域にわたる軍糧輸送のための労働力編成 の問題が横たわっている。趙光奇の「百姓不樂」は、その背景に千載をこえて広がる何千何億もの百姓たちの「不樂」を想像させる。趙光奇が代表する「百姓不樂」の、そのよって来たる歴史的淵源を明らかにする ためには、租税・徭役收取、軍事経費、財物輸送をふくむ財政史研究と財政の前提をなす国家の研究が不可欠である。 私は、これまで春秋戦国期から唐宋変革期にいたるまでの農業・農村社 会と土地所有(渡辺一九八六)、イデオロギーと政治的社会編成(渡辺一九九 四)、国家の政治的意思決定過程と儀礼執行(渡辺一九九六)、「天下」をめ ぐる国家論(渡辺二〇〇三)の研究をつうじて、戦国期から隋唐期にいたる ほぼ一千有余年の時代をそれ以後の社会と区別して、中国における古代 的社会構成体であると認識してきた。本書は、それらの研究を土台と し、漢代から唐宋変革期にいたるまでの財政史研究をとおして、「百 姓不樂」の背景にある中国古代国家の歴史的特質を明らかにすること を目的とする。・・・・古代中国を通観し、財政史的観点から国家と社会の 相互関係を分析し、つぎにくる社会構成体への展開まで視野に入れて 、その歴史的特質にせまろうとするものは、ほとんどないといってよ い。本書は、この研究状況を克服するための、一つの試みである。
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